戦友

生検の結果で再発が判明し、「とにかく一刻も早く治療をしなさい」と医師に言われ、訳がわからないほど泣きながら私は帰宅しました。

心配してくれていた友人知人には今後のことを伝えなければなりませんでした。

「あなたの気持ちはよくわかります。実は私も検査でがんが見つかり入院しなければなりません。あなたと私は戦友です。同じ敵と戦う。必ず勝って、少しおしゃれをしてまた一緒に食事をしましょう。‥」とある人から返事がきました。時々、お食事をご馳走して下さったり、お宅に伺ったり、たまには一緒にコンサートに行ったり、いつも相談にのってくださる、とても素敵な紳士でした。

人は必ず約束は守ろうとする。だから身の危険がある時は誰かと大切な約束をして別れるのがいいそうです。私が再入院する時も何人かの大事な友人知人とそれぞれ約束をしました。

だから、この時も戦友との約束は、私の戦場での武器のひとつにもなったわけです。大事な知人とまた必ず会う約束は果たさなきゃいけません。

戦友は食道がんでした。

私が戦場からうちに戻ってきても、彼はまだ戦場にいました。何とか戻って来れないものか‥。彼の奥様と必死に探りました。しかし、会いに行くたび、彼は小さくなっていくのがわかりました。「お願い、頑張って。」何度も手を握り、私は〝最高に頑張っている〟彼に訴えていました。

「いろいろありがとう。ごめんなさい」とメールが届いた数日後、彼は帰らぬ人となりました。いつでも応援してくれた大事な知人を奪った敵が憎かった。悔しくて悔しくてたまりませんでした。がんとの闘いはまさに戦場でした。

だから、

私はその戦友の分もこの世を楽しみ、味わい、喜び、生きたい。

彼は私の歌が好きだといつも応援してくれました。

だから、

歌い続けたいと思います。

きっとどこかで聞いてくれているはずですから。

ねっ!

 

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