小さい頃、私はいつもレコードを聞いていた。歌が大好きだったのに、母から「圭以子は音痴だからうちでは歌ってはいけない」と禁止令が出ていたので、自分の部屋でレコードをかけて〝小さな声〟で一緒に歌っていた。何時間でも繰り返し、繰り返し‥。飽きるなんてことは全くなかった。何か買ってあげるよと声がかかると、すぐに答えられた。欲しいものはいつでもレコード、欲しいレコードの順番まで考えていて、その声がかかるのを今か今かと待っていた。ステレオを買ってもらった時はそれはそれは嬉しくてたまらなかった。それまで私が聞いていたのは、父か母が昔使っていたであろうポータブルの簡易プレーヤーで音楽を聴くような音ではなかったことをさすがに感じていた。そのプレーヤーは押入れの奥から私が見つけたものだった。子供部屋の押し入れには不思議なものがいろいろ入っていた。アコーディオンにウクレレ、ギター、それから紙芝居用の立派な枠‥。木製でオシャレな飾りが施されていて、もちろんその枠にはまる紙芝居も何種類かあった。ちなみに父も母もアコーディオンもギターも演奏しない。いったい誰が何のために買い、使っていたのだろう。
それから少し大きくなり母からお小遣いをもらうようになると、もちろん毎月レコードを買った。一枚一枚、レコードラックに入れ指紋がつかないように磨きながら大切に扱った。それだけ歌の練習を積み重ねるとさすがに親も認めてくれ、禁止令は取り下げられた。そんなうちにレコードデビューも決まる!いつでもいっぱい歌え、ボイストレーニングもしてもらえると、そこが一番楽しみだった。
が、現実はちょっと違った‥。アイドル歌手としてお仕事をさせて頂いていた時は、あんなに好きだった歌がそれほど好きではなかった。あまり歌える時間もなく、どんどんと歌から遠ざかっていたような気がした。とにかくいつもクタクタで余裕がなく、自分が大嫌いだった。
それから何年か経ち、レコードは消え音楽はCDで聴くようになった。私は昔のように時間さえあればCDショップにいた。気になるCDは買った。食べ物やおしゃれよりもいろんな音楽が聞きたかった。今のように視聴も出来ず、買って聴くしかなかったのでうちには一度しか聞かないCDが山のようにたまってしまった。食べ物は食べたらおしまいだけど、音楽は私の血や肉になる!なんて本気で信じていた‥。イヤイヤ、血や肉になるのは音楽じゃなく食べ物でしょ?今なら迷わず食べ物を選ぶ(笑)。
音楽をダウンロードしながらこんなことを思っていた。あらゆるジャンルの音楽が視聴でき、そのあとで購入するか否か決めることが出来、また月額で好きなだけ音楽がダウンロード出来たり、いつでもどこでも気軽に新しい音楽が聴けるなんて、あのころにしてみたら夢のようだ。ありがたい。CDショップなんて全く行かなくなってしまった。新しく見つけたCDをうちで聴くのが待ち遠しくて、電車の中でドキドキソワソワ。そのうちどうしても待ちきれなくなってしまい電車の中でコソコソとビニールの封を開けて歌詞カードをそっと取り出して読みながら帰ったこと、懐かしい。まるでお腹を空かせた育ち盛りの子が我慢できなくて鞄の中からくしゃくしゃになった菓子パンを取り出してかじってしまったような、あの気持ちをもう味わうことはないんだろうな。少し寂しい気もする。あの頃の音楽はもっと尊いものだった。
ほんと、違う時代になっちゃいましたね。
レコード屋でレコードを探すときのドキドキ感、たまりませんでした。
今のように簡単に手に入らない音楽・・
だからこそ、1曲1曲が大切に思えたのかもしれません。
ただ、食べ物と同じで、
大好きなものを食べすぎると、食べ飽きちゃいますよね。
圭以子さんの場合、アイドル時代、
もしかして、食べた場所も良くなかったのかな?
ほんとは、美味しい美味しいはずの歌が・・
お店の雰囲気と味が自分にマッチせずに、違和感を感じちゃったのか・・
でも、圭以子さんの歌、
何度聞いても飽きなかったですよ。
おかげで、多分、今でも歌詞を見なくても一緒に歌えるはずです。(笑)
ken様
こんにちは、メッセージありがとうございます。
何度も読み返していろいろ考えました。
嬉しいです。今度一緒に歌えるチャンスがあるといいですね。歌詞を見ずに(笑)!
本当にありがとう。暑い日が続いていますので体調気をつけて下さいね。