「気がついてあげられなくてごめんね。次の人にはちゃんと言うからね。」
主治医は私にそう告げて下さいました。いわゆる告知の時です。1度目の治療が終わり1年半を過ぎた時でした。
本来、悪性リンパ腫のリンパの腫れは痛みがないと言われていますが、私の場合、次々と現れた腫瘍は思い切りバットで殴られたような強い痛みと火傷をした時のようなヒリヒリ感がありました。そして、しばらくすると痛みはやや穏やかになり、腫れも少し落ち着くという感じでした。PET検査では、再発の疑いあり。でも「こういうことは良くあるんですよ」とあまり問題にはされませんでした。悪性リンパ腫は血液内科の領域ですが、頸部は耳鼻咽喉科の領域になるそうで、そこの病院では検査はすべて血液内科から耳鼻咽喉科に検査を依頼しなければなりませんでした。その診察や予約に1ヶ月以上。数ヶ月かかってCTやエコー、針を刺しての細胞検査では疑陽性という結果。とにかく、具合いが悪いと訴えてから、なぜこんなに時間がかかるのだろうと不思議なくらいリンパの腫れの原因がなかなかわかりませんでした。
診察の度、主治医の教授先生の「なんだろうね?でも、痛みもあるし、出ては引っ込むんだから悪いものじゃないと思うよ」という言葉はいつも私につかの間の安心感を与え、その度に大丈夫と自分に常に言い聞かせておりました。
半年間、熱は毎日38.6℃。処方して頂いた解熱剤を飲み忘れると、体温計はいつも9度近くをさしていました。異常な悪寒、息苦しさ、吐き気、下痢。痛み止めと整腸剤、様々な抗生物質で数ヶ月。何度も激痛で緊急入院。
「まさかガンが再発して進行してるってことはないですよね?」さすがに幾度かたずねましたが、そかれでも自分の身体にいったい何が起こっているのか不安な月日が流れるだけでした。
告知の時、どこかで覚悟はしていたけれど、信じたくない‥。私の中には主治医の言葉にどう反応したらいいのかと妙に冷静に考えている私と、認めたくないと必死に抵抗し平常心を失い泣きじゃくっている2人の私がいました。
寛解してから毎月通っていた経過観察は何だったのだろう?
。。。
いろんな思いが頭の中を駆け巡りました。
先生も、再発、それもここまで病状が進行してしまってからの告知はお辛かったでしょう。告知はお医者様の最もお辛いお仕事のひとつかも知れないとその時私は思いました。
でも
「次の人って?次の人は私じゃないんですよ‥」
あの時、私はただそれしか言葉がみつかりませんでした。
私は、一人の人間でもなく、ひとつの命でもなく、「症例その1」だった瞬間でした。
新たな発見があり、医学も進歩し、そのおかげで病気を克服できる人も増えているわけです。私が元気になったのも、きっとその繰り返しのおかげです。
悪性リンパ腫は一冊の本が書けるほど、たくさんの種類がある難しい病気だそうです。
この症例がもし、誰かの早く病気を発見でき、少しでも誰かの苦しみやご家族の悲しみも和らぐのなら、是非そうあって欲しいと心から願います。
医学のさらなる進歩を願って。
中山圭以子
大変な思いをされましたね
本当に医学の進歩は目覚ましいと思います
それでも今、この瞬間にも苦しみ不安に苛まれている人々がいることを思うと胸が痛みます
圭以子さんか過ぎたこととしてて振り返ることができるていることを喜ばしく思っています
エドワード様
コメントありがとうございます。
本当に。
いろいろ考えさせられました。いつも素敵なお言葉、ありがとうございます。